「月には白のおまじない」あとがき

 2009年は11月に入るまで、とにかくミステリーしか書いていませんでした。鮎川哲也賞に送った小説の出来がいまひとつだったのもあって、しばらくはミステリーから離れようと思い、この話を書き始めました。この文章を書いている2009年12月末の段階で、この小説は第四話まで発表されています。

 書き方は、以前書いた「僕たちの問題」と同じ形式で――最後までプロットを作らずに、その場のノリとアドリブで話を作っていきました。
 ただし、「僕たちの問題」での失敗と生かして、今回は序盤はとにかくキャラクターを増やし、人間関係を複雑にすることを意識していました。ラブコメ漫画の風呂敷の広げ方を参考にさせていただきました。
 さて問題は、この先叶衣さんがその風呂敷を畳めるかどうかということですが……それは、これからの連載にご期待ください(笑

 そういえば、敬体(「です、ます」調)で小説を書くのは初めてです。最初のころはとにかく馴れなくて、気がつくと常体(「だ、である」調)の文章になっていたりして、おまけに普段と違うことをやるもんだから読み直すと誤字脱字の嵐に。
 主人公の乃美子の一人称なので、とにかく彼女のキャラを立たせよう、彼女を変なやつにしよう、という方向で話を進めています。普通に常体で書くと、彼女のようなうじうじ悩むタイプのキャラクターは受け入れられないんじゃないかなあ、という気がしています。

 竹折乃美子という名前は、わたしがサイトを立ち上げる二年ほど前に書いた「神に誓ってあなたが殺す」というミステリーの主人公の名前から拝借しました。そのさらに元ネタは歌手の「のみこ」さんだったりします。その作品では、死んだ人間と意思疎通ができるという、ミステリーの外枠を破壊するとんでもない設定の主人公として活躍予定でしたが、トリックに難があって結局お蔵入りしてしまいました。設定自体は気に入っているので、いつかどこかでその設定を流用できたらなー、と考えています。
 真剣に悩んでるんですけど、悩むポイントがどこかずれてたり、おいおいそんな真剣に悩むことかよってくらい悩んだり、ことあるごとに予防線を張ってたりする乃美子さんです。少女マンガかケータイ小説に出てきそうな主人公を、わたしなりにアレンジした結果がこんなキャラです。
 わたしの筆力でちゃんと描けているかどうかは分かりませんが、個人的にはとても気に入っているキャラクターのひとりです。
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