「密室にデュラハン」あとがき

 時間的には「死よ、純白に彩られ」の次に書いた、わたしにとっての五作目のミステリーです。「歪曲館の消失」の続編であり、世界観や登場人物を一部共有していますが、まあ、別にあっちの方を読まなくても楽しめると思います。

 市販の小説でのシリーズ物は二種類あって、前作を読まないと話がさっぱり分からないものと、前作を読んでいなくてもぜんぜん関係がないものがあります。当サイトでいえば「灰色」「青色」のシリーズは前者で、「歪曲館の消失」「密室にデュラハン」は後者に当たります。
 大体シリーズ探偵とかシリーズ物のミステリーっていうと後者が多いですね。逆に、ライトノベルの方にいくとシリーズで読まないとまったくストーリーを追えなかったりします。

 本作で特筆すべきことは、何と言っても「第二回アルファポリスミステリー大賞」をいただいたことでしょう。
 受賞のメールをいただいたとき、まさかという思いと、叶衣始まったな、という思いがわたしの中で交錯していました。
 まさかではなく本当に受賞したことや、確かに受賞したけど叶衣ぜんぜん始まってないってことは、当サイトを見ていらっしゃるみなさまには十分承知のことと思われますが(爆
 確かに受賞はしましたが、結局出版は見送りになってしまいましたからねえ。つまり商業のレベルには達していない、お金取るのもおこがましい、という編集部の判断なのだと思います。まだまだ未熟な叶衣さんです。
 あと、受賞に際して、様々な方から感想メッセージや励ましのお便りをいただきまして、とてもありがとうございます。わたしの腕が出版のレベルにないことは残念ですが、そういう方々と出会えたことはとても嬉しく思います。エントリーして良かった。

 この話を手がけていたときに、ひとつわたしの中にあった課題が「どこまで長い話を書けるか」ということでした。この時点で十月末の鮎川哲也賞(本格ミステリーの新人賞)を視野に入れていたので、鮎川哲也賞に規定されている最低量(原稿用紙で400枚以上くらい)が書けるのかどうか実験する必要があったわけです。
 が、実際に書いてみると、話を引き延ばすのがとにかく苦痛で……。おかげで中盤のぐだぐだっぷりったら、ひどいことになってます。なんとか350枚まで繋ぎましたが、これ以上は無理だと判断して素直に完結させました。普通に書いてたら200枚くらいで終わっていたかもしれません。

 テーマは「理解不能な他者」。「歪曲館の消失」を書いていたときから、自分と他者、コミュニケーションと価値観などのテーマに興味を持ち始めていました。真理紗にとって、如月や彩乃や九十九は理解不能な他者ですが、逆に彼女たちの方から見れば真理紗こそ理解不可能なイレギュラーだったのかもしれません。
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