「白猫の構造解析」あとがき

 10月末の「鮎川哲也賞」に小説を投稿した直後……というよりは、投稿した日に二時間で書き上げた小説です。

 鮎川哲也賞用の長編ミステリー「裁くのは彼女」が、それはもうものすごい難産で、五月から取りかかって十月末の締め切りにぎりぎり間に合った……という感じでした。しかも内容的にはかなり不安や不満の残る出来で、それまでずーっと同じ作品に苦しめられてきた鬱憤、自分の才能への絶望などをとにかく発散したくてこの作品を書きました。

 内容的には基本的な序破急の構成で、中身はなんてことのないただの説教です。説教自体は、わたしが前々から思っていても、なかなか自分では実行できない類のものです。わたしの書いた作品に込められたテーマの多くは、読者の方に向けているのではなくて、むしろわたし自身への耳の痛い説教であることが多いです。

 「成功に縛られるな」ということは他人の価値観に引きずられるな、ということですが、言葉では分かっていても、他人の価値観から自由になるのはなかなか難しいです。このあたりの危険性は「密室にデュラハン」でも触れていますが、問題を提起できても、これを解決するのは並大抵のことではありません。それこそ革命でも起こさなければ、わたしたちの中にある「拝金主義」「会社主義」を駆逐することは難しいでしょう。
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