「青色」あとがき
アネクメーネ防衛軍の運営を初めて二作目のミステリーとなります。この頃はまだそれほどミステリーに傾倒していたわけではなくて、どちらかというとメインはファンタジー、サブでミステリー、という形態を考えていました。
プロットは前作の灰色を書いている最中に思いつきました。まあ誰でも思いつきそうな意外性ですが……(笑)。どちらかというと最初の密室トリックの方がお気に入りです。もしかしたら先例があるかもしれませんが。……あるかも(爆
前作を読んでいただいた方の中にはキャラクターが気に入ったと言ってくださった方がいて、このような形でシリーズキャラクター(と言っても二作しか出てませんけど)すべてを退場させるのは心苦しくも思ったのですが。
そもそものわたしの意図としては、とにかく読者の安心を破壊したい、予定調和から脱却したい、ということがありました。作家の某氏も指摘されていましたが、ミステリーにおいてシリーズキャラクターがいるということは、ミステリーの持つサスペンス性(誰が殺されるのか、誰が生き残れるのか)を大きく阻害する要因になりかねないのです。
今後、わたしがミステリーを書き続けていく上で、読者の方々にそう思われるのは大きなマイナスになると思うんですね。読んでいる人に「ああ、この作者は探偵だろうとシリーズキャラクターだろうと容赦なく殺す人だ」と思っていただく必要があったのです。
二作目にこれを持ってきたのにも理由があります。
例えばシリーズ最終回となれば、読者も身構えます。これは何かサプライズがあるぞ、と。場合によっては探偵の死、というのも視野に入れるでしょう。
しかし二作目ならば、この作品が出た段階で芝川や崎は初めてシリーズキャラクターの条件を満たすわけで、まさかその直後に殺される(シリーズキャラクターとして一切の活躍もせぬまま)なんて誰も予想できまい、とほくそ笑みながら計画を練ったわけです。葵荘殺人事件の犯人はわたしですね(笑
前作を読んだ方で、少し駆け足すぎるのでもう少しゆっくり、読者が推理できるような材料を出した方が良いのではないか、という意見をいただきました。それを受けて、今作では謎の提示から解決まで間を置くようにしてみました。まあその結果テンポが最悪になってしまったわけですが(爆)。この辺はなかなか難しい問題なんですよね……。実は未だに解決できていなかったりします。つまり本編以外のサブエピソードで間を持たせなければいけないのですが。ミステリー三作目の「歪曲館の消失」でこの辺りの弱点が顕在化してしまいました。
そういえば、当初の予定では登場人物紹介と現場の見取り図を載せる予定でした。ちゃんとした地図を作るのが面倒で、結局未遂に終わってしまいましたけどね。登場人物紹介は、芝川が探偵であることの補強、引いてはシリーズキャラクターが殺されるはずがない、という先入観を強化するのが目的でした。こちらはどこに登場人物紹介を載せるかで迷って、結局見送ってしまいましたが。
あと、今作の英題は密かにお気に入り。
芝川
今作で探偵役はお役御免になってしまいました。役も命も奪われた可哀相な人です。
結局下の名前は不明なままになってしまいました。この辺りを利用して叙述トリックでも挟めないかとも思ったのですが、これ以上の冒険は危険と判断して撤退。
ミステリーの探偵役としてはとっても使いやすいので(推理に時間が掛かる)、いつか芝川を主人公にした長編ミステリーも書いてみたいです。彼が探偵をクビになった理由も未だに謎のままですしね。最後まで謎の多い人です。
崎警視
芝川とのコンビは書いていて楽しかったのですが、今作であえなく脱落。
この人の再登場はもうないでしょう。あるいはレクター博士のように、刑務所の面会室で登場させることはできると思いますが、ゲストキャラクターにしては彼は少しパンチが足りないような気がします。
にしても最後のパトカーの中での会話、崎警視はずっとカツラを被ったままなんですよね。絵面を想像するとすごく奇妙です。
堂東成絵
犯人候補の筆頭。トリックスター的な役割を与えたかったのですがうまくいきませんでした。
この話、登場人物が極端に少ないのが弱点と言えば弱点ですね……。もうちょっと数を増やして煙に巻けばよかったかもです。
藍川優
重要人物。この人がいなければ青色は物語として成り立たなかったかも……。
他の作品でも通用しそうなのはこの人くらいですね。にしてもキャラは弱いですけど。