「さよならベルティエール」あとがき

 当サイトの小説の中でもっとも初期に作られた作品。
 初期に作られた、ということは、つまり完成度が低いということです(笑
 しかしそれでも、これを書いていたときはそれなりの勝算がある、と思っていたんですけど。どうですか? 勝ってますか?(笑
 そもそもは小説のサイトを開くために小説を書き始めたのがきっかけですからね……。念願が叶ってやっとサイトをオープンできたわけですが、その最初の一歩となった記念すべき作品です。

 コテコテの現代ファンタジーでしかも能力バトルを書きたい! という欲求が昔からあって、そういう話を何度も何度も書き直して、最後に出来上がったのがこの作品です。多分五回くらいリライトしてます。最初は原稿用紙600枚を超える熱いライトノベルだったのが、気がつけば長さが半分になってちょっと小賢しいオチを付けてしまってました(笑
 そもそも、前に書いていた(書き直す前の)やつとはストーリーも登場人物もまったくの別物なんですけどね。それでもわたしの中では「リテイク番」というイメージが強く残っています。
 ただ、それらの作品にはたったひとつの共通点として「普通の高校生が魔術師の争いに巻き込まれる」というライトノベルのテンプレ的な展開が含まれていました。多分わたしはその点がいつも頭にあって、これら一連の作品を同一のものだと感じていたんじゃないかと思います。
 今思い返すと、わたしはその展開にずっと縛られていたんだと思います。何度もリテイクを繰り返して、いくつもいくつも書き直したわけですが、わたしはどうしても「ただの素人が魔術師の争いに巻き込まれて大活躍する」という点が消化できなかったんです。

 そもそもわたしはなぜ平凡な高校生が魔術師の争いに巻き込まれ――などという話を書くのにこだわっていたかというと、ひとつは「魔術師」という強烈な物語性への憧れであり、もうひとつは強力な物語を作るには世界そのものに関わる何かをギミックとして使うしかない、と考えていたからです。
 ですが、物語の力(勢い?)っていうのはそんな簡単に作り出せるわけじゃないんですよね。再三にわたる失敗でわたしはやっとその事実に気がついたわけです。
 じゃあ物語性というのは何に宿るのか?
 んで、閃いたんですね。物語性ってのは人の意志に宿るんだ、と。つまり、登場人物が努力したり、必死にもがいたり、何かが欲しいと熱望したりとか。そういう思いの強さとか、現状を突き破って外に飛び出そうとするパワーが世界を動かして物語を作るんじゃないか、と。
 まあただの思いつきです(笑
 実はこのことに思い至ったのは「さよならベルティエール」を書き終わった後でして……。だから完全に後付の理屈です(爆
 自分の無意識が、当初は大活躍する予定だった洋祐を魔術師の戦いから退場させて、吹喜を本来のフィールドで大暴れさせたんだと考えると、なんか面白いですね。

 この作品を完成させた時点では続編の構想がちゃんとありましたし、少なくとも現代ファンタジー(もっと限定すれば能力バトル物)はもっと書き続ける予定でした。
 それが、これを書き終わり、ミステリーに触手を伸ばした辺りからばったりとその欲求がなくなってしまいました。そういう意味では本作の完結が、ライトノベルへの欲求に対する厄払いになったのかもしれません。


篠葉洋祐
 元々は主人公のつもりで作品に登場させた人。
 ただの高校生ながら魔術師を相手に大活躍の予定……だったんですが。ただの子供が、殺し合いのプロである悠膳たちに立ち向かうだけの「リアル」を見つけられずに、とうとう物語からフェードアウトしてしまいました(爆
 しかしこれは、それまでのわたしの思い込み――物語はロマンティックな場所にしか生まれ得ない、ということへの反論というか。特別な人間でなくても、殺し合いが出来なくても、自分の領域で、自分の殻を突破できれば、それは特別な物語なのではないか、と。この考えは後に執筆した「僕たちの問題」で再結晶しました。……多分。
 キャラクターのコンセプトは……何でしたっけ(爆
 それくらい印象の薄い主人公です。最初はボケで押し通そうと思ったんですけど、予想以上にボケ辛かったんで、諦めてツッコミに転向させました。とりあえずどうとでも動かせるような色の薄いキャラクターにしてみた、というのが正解かも。

右島吹喜
 本作の主人公、の一人。だったのですが、もう片方の洋祐くんがヒロインになってしまったため、自動的にヒーローの役目が彼女に回ってきてしまいました。
 結局のところ本作は、吹喜が本気になる、というだけの物語です。熱くなれ、自分の殻を破れ、一歩でも前に出ろ、というのはこの作品以降にも何度か主張したことなんですが、本作でもそれが反映されて、最終的に吹喜はそれまでの自分の領域から一歩踏み出して――新しい考え方、生き方を手にします。
 キャラクターのコンセプトは、冷静なようでいて、中身は意外と普通(笑
 実際周りの人間がイメージしてるような子じゃないんですよね。単に外部から理解されることを放棄しているだけで、実際は割と普通の考え方で普通の悩みを持っています。
 それにしてもナイフ使い、格好良いですよね。文章でうまく表現されてるとは言い難いですが(爆

有檻悠膳
 ラスボスにして最も身勝手な人(笑
 前半は理解のある父親を演じておきながら、後半に至っては迷わず吹喜を殺害、の割にはあっさりメルベルに敗北した情けない人です。
 あんまりそういうイメージはなかったんですが、悠膳と吹喜の親子関係ってダメ親父と父親を見捨てられない健気な娘、って感じですね。いい年して夢を追いかけて、挙句の果てには娘に暴力を振るうんだけど、普段は優しい良い父親だから捨てるに捨てられず、結局父親の面倒を見るはめに……(爆
 ちなみに彼の命至上主義は、巷に溢れている「命より尊いものはない」という考え方に対するアンチテーゼであります。物事には優先順位はあっても、至上なものなんてないんじゃないか、というのが叶衣さんの考え方です。

連絃
 蜘蛛のおねーさん。
 旅説に従ったり悠膳に懐いたり洋祐と仲良くしたり、とまあとにかく節操のない人です。本人は単にみんなと仲良くしたいだけなんじゃないかと思いますけどね。案外保健室の先生やってるのが楽しかったのかもしれません。
 続編出すとしたら彼女は必ず出演させるでしょう。

ノア・メルベル
 真のラスボス。
 ただの萌えっ子じゃなかった人(笑
 これはわたしの弱点でもあるんですけどね……。馬鹿なキャラがどうしても書けません。いや、手を抜けばいくらでも出せるんですが、そういうキャラにリアリティを出せないというか。ちゃんと生きてるなら、必ず何かを考えて、悩むはずです。いい歳して死や人生の意味について一度でも考えない人間なんていない、という思い込みがわたしにはあるようです(爆

三木田奈々
 幼なじみ。もうど真ん中の直球幼なじみ。のはずが、どうやらわたしには幼なじみに対する愛情が足りなかったようです(爆
 プロットの段階では「七奈」って名前になってました。が、本文を半分くらい書き進めたところで彼女の名前がすべて「奈々」になっているのを発見、いちいち直すの面倒くさいや、というのでプロットの方を修正しました(プロットの意味なし)。
 本当はちゃんとした役割を与えたかったんですけどねえ……。物語的に仕方なかったとはいえ、当て馬みたいになってしまったのが心苦しいです。っていうのは嘘ですけど。実は罪悪感なんて微塵も感じてません。
 幼なじみが恋愛関係に発展する可能性がどれくらいあるのか分からないですけど、わたしの理想の幼なじみって、互いに向かい合うんじゃなくて、一緒に同じ方向を向いてくれるような人なんです。恋愛感情を持つとどうしてもお互いに向き合って押し合い引き合いになってしまいますから。良き友人として、洋祐と同じ向きを向いて一緒に進む仲間であって欲しいですね。洋祐みたいなのに引っかかっちゃダメだって(笑

有檻遥
 眼鏡っ子でシスコン。
 彼自身は吹喜ほどには悠膳に対して執着がなさそう。ヤバくなったときに一人でさっさと逃げてますしね。実はしたたかな人。

蜂須真司
 親友のロリコン。
 休み明けに彼が来なかったのは本編に関わりのないところでこそこそ活動していたからです。多分。
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